汐見稔幸教授のおススメ!雑誌『子ども学』のご紹介

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四谷学院保育士講座の監修である汐見稔幸先生より、本のご紹介をいただきました。
『子ども学』というやや専門的な雑誌ですが、どなたでも手に取っていただける本です。内容もとても興味深く、子どもと関わるお仕事に熱心に携わっている方やもっと勉強してみたいという方に特にオススメします。
年に1冊の刊行なので、確実に入手できるようぜひ購読されてみてくださいね。

以下、汐見先生からのコメントです。

私たちは『子ども学』という、ちょっと専門的なスタイルの雑誌を出しています。毎年一冊ずつ出していて、7号まで出ています。
ちなみに7号の内容は
子どもの哲学
子どももの哲学とは平和構築である
対話的思考の真理
子どもと環境
子どもにとっての場所の体験
授乳おむつ替え環境のデザイン
保育記録
現代イギリスにおける保育の記録と評価
わが国におけるドキュメンテーションの可能性に関する一考察
保育の計画につながる保育記録とは
などです。
最後の二本は、大豆生田さん、河辺貴子さんの論文です。
いい雑誌なんですが、誰も出ているのを知らないという稀有な雑誌です。学会でしか売ってないからでしょうか。

最新の『子ども学』は第7号です!

ホームページはコチラです。アマゾンなどでも購入可能です。
萌文書院より出版されています。
https://houbun.com/item/267.html

著者

白梅学園大学・白梅学園短期大学子ども学研究所「子ども学」編集委員会 編集

版型・頁

B5判 194頁(2019/05/24)

ISBN

978-4-89347-267-0

税込価格

¥1,980円(本体¥1,800+税)

<概要>

『子ども学』第7号発刊!
子どもについての研究は,保育学でも,児童文化論でも,発達心理学でも,小児医学でも,もちろん脳科学や赤ちゃん学でも行われています。しかしその成果は,まだまだ十分とはいえません。十分でないというのは,個々の成果が乏しいということではなく,子どもについての研究や学問が,学問全体の長い歴史から見ると,まだ一部を除いて多くが駆け出しの段階だということです。
子どもについての研究は,いくつかの点でハードルがありましたし,今もあります。一つは,ほんの幼い時期の子どもは,これまで研究方法が十分に開発されなかったこと,赤ちゃんの研究などは,コンピュータや測定器具の発展なしには不可能でした。これまでは,育児の最中の赤ちゃんの様子から,生まれてすぐには,目は見えないのだ,抱っこの習慣をつけすぎると,あとで苦労する等々の理論をつくっていたことが多かったのです。もう一つは,あまり指摘されませんが,子どもを研究することが社会の発展につながるとか,経済的な利益につながるなど,世俗的なメリットにつながらない,という判断があったことも,多くの人が子どもを専門的に研究しようと思うようにならない要因でした。
しかし状況は大きく変わってきました。測定の器具などの発達で子どもの内的世界の様子がある程度データとして客観化できるようになってきましたし,育児の困難などの現実が,逆に子どもの育つ条件の解明に向かわせています。保育・幼児教育の重視策が,対象としての子どもの研究を要請していますし,乳幼児期の体験とその段階で身につけるものが,その人の一生に果たす役割についても,より実証的に研究できるようになってきました。子ども研究は,社会政策の基礎学ともなり得ますし,経済政策の基礎学ともなりうることが見えてきています。
本誌今号のテーマの内容や論考の諸テーマが,そうした機運が高まってきていることを実証しています。子どもは十分に哲学研究のテーマにも,対象にもなること,子どもの育ての内容と質が平和の実現に直結していること,その意味で育児・保育は,政治学の実践でもあること,環境論は子どもを媒介とすることでラディカルになりうること,そして保育の実践が記録を媒介にすることで,即,子ども研究になりうることなどが説得的に示されています。今後,たとえばこうした研究を積み重ね,これ以外の,たとえば子ども研究の社会学とか,子ども研究の政治学,子ども研究の歴史学,あるいは子ども研究と環境保全学等々,子ども研究自体がほかの学問に問いや課題を投げかけるようになることを期待してやみません。
(編集委員顧問 白梅学園大学・短期大学名誉学長 汐見稔幸「はじめに」より)