臨床心理士とは、財団法人 日本臨床心理士資格認定協会(文部科学省認可)が認定する資格です。心の専門家(カウンセラー)として、近年では教育・医療などの分野にとどまらず、広く社会全体で求められている人材です。
うつ病を経験したことのある人は約15人に1人、自殺者数は年間3万人といったように、心の病で苦しんでいる人の数は決して少なくありません。社会が複雑化していく中で、そうした心の問題を抱える人はますます増えているといえるでしょう。そんな中、広く社会全体で専門的に心のケアを行う人材が求められており、臨床心理士の活躍するフィールドは非常に広いといえるでしょう。
スクールカウンセラーとして、発達や学業などにおける問題に対して、学生(児童・生徒)本人に心理的援助を行います。また、本人だけでなく、保護者や教師に対してもコンサルテーションを行ったり、必要に応じて関連機関との橋渡しの役割もします。
こころの障害で生活が難しい人や精神的に不安定になっている患者への心理的援助を行います。医師と連携して、心理検査を行ったり、インテーク面接(初回面接)、心理療法などを実施します。
病院やクリニックの精神科や心療内科、あるいは小児科、保健所、精神保健福祉センターなどが具体的な職場として挙げられます。
地域住民の心身の健康に深く関わるのが福祉の領域です。具体的には、子どもの発達や問題行動についての相談、高齢者や障害者などの社会的支援を必要とする人への心理的ケア、DVをはじめとする女性に関する問題への心理的援助を行います。
職場としては、児童相談所、療育施設、女性相談支援センター、身体障害者福祉センター、障害者更生相談所(リハビリセンター)、各児童福祉施設などがあります。
非行や犯罪をおこした者の処遇を決める際の心理的側面の検査や助言を行います。また、犯罪被害者への心理的サポートも行います。
公務員の心理職という枠での採用が多く、家庭裁判所(調査官)、少年鑑別所(法務技官)、刑務所、少年院、児童自立支援施設などのほか、警察関係の相談室が職場としてあります。
職業生活の安定のため、働いている人やこれから働きたい人、あるいはその家族のために心理的援助を行います。
具体的には心理相談のほか、職業適性診断などのアセスメント(評価や査定)を行い、仕事や人間関係のストレスなど、企業内におけるメンタルヘルス(精神的健康)を守り、快適な労働環境を整えたり、社員の能力開発への支援を行います。
企業内の相談室や健康管理センター、公立の職業安定所(ハローワーク)、障害者職業センターなどが職場です。
臨床心理士が心理職として活躍できる分野は多岐にわたり、カウンセリングや心理検査などの心理的援助を行っていきます。上記のほかに、カウンセリングルームや相談室を開業している臨床心理士もいます。多くの現場で、即戦力になる有資格者が求められていますが、心理職としての実務以外では、大学や研究機関において心理研究を中心に行う臨床心理士もいます。
進路の選択にあたっては、教育・医療・福祉・司法・産業(労働)という領域を広く学ぶことが、自身の専門を考えていくうえで有意義になるでしょう。
臨床心理士になるためには、「資格試験」に合格する必要があります。臨床心理士の資格には、年齢や性別の制限はありません。
しかしその前に指定大学院に入学し、修了(卒業)することが資格試験の受験の条件となります。本講座は最初の関門である「臨床心理士指定大学院」への入学に向けた入試対策講座です。
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会による「臨床心理士指定大学院」は、全国におよそ160校あります。指定大学院には「第1種」「第2種」「専門職大学院」があります。第1種大学院・専門職大学院を修了(卒業)した場合、その年に行われる臨床心理資格試験の受験が可能です。一方、第2種大学院を修了(卒業)した場合には、「臨床心理士資格試験」の受験要件として、修了(卒業)後に心理臨床現場で1年以上の実務経験が課せられます。
実務経験とは、教育相談機関、病院等の医療機関、心理相談機関等での心理相談員やカウンセラーとしての経験などが主なものです。
指定大学院は原則として、大学で心理学を専攻していなくても受験することができます。大学によって、他学部卒業者の受け入れ状況は様々ですが、実際には他学部卒業者が指定大学院に合格している例は数多くあります。
大学院により、研究計画書、志望理由書、小論文の提出があります。
修了後、すぐに資格試験を受験できる
修了後、1年以上の臨床試験を経れば資格試験を受験できる
資格試験は年1回、秋に行われます。
1次試験が筆記試験、2次試験が口述試験です。
(専門職大学院修了者は1次試験の小論文が免除)
臨床心理士の資格を取得
臨床心理士になるためには、まず臨床心理士を養成する「指定大学院」に合格する必要があります。
大学院受験は、「大学入試」と異なり、偏差値はありません。難易度に関わらず、人気の大学院は倍率が高くなります。たとえば、社会人が通いやすい通信制の大学院は、第二種である場合がほとんどですが、その合格倍率は20倍にもなる年があります。
大学院入試は、一般的には春と秋に行われます。大学院によって実施時期や回数が異なり、年2回入試を行う学校もあれば、春もしくは秋入試のみを行うケースもあります。
臨床心理士になるコースは、大学院の専門修士課程として設置されています。また、一層専門的な養成に特化した専門職大学院も開設されています。
大学院では、文化科学研究科や人文科学学科などの「臨床心理コース」等を専攻しますが、大学院によって学科や専攻の名称が異なるので、名称によってはわかりにくいこともあるため、志望校を決定する際には、必ず「臨床心理士の養成カリキュラム」であることを確認しましょう。
なお、第1種大学院・専門職大学院の場合、最短で卒業したその年の秋に行われる臨床心理士資格試験を受験することができます。第2種大学院の場合、修了(卒業)後に1年以上の実務経験が必要であるため、最短で卒業後1年半で資格試験の受験が可能です。
臨床心理士資格試験の合格率はおよそ6割となっており、資格を取得すれば「臨床心理士」として働くことができます。
資格を取得すれば「臨床心理士」として働くことができます。
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