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スタンフォード大学の心理実験「監獄実験」

  公開日:2018/01/31
最終更新日:2018/02/05

※この記事は約4分で読めます。

こんにちは、四谷学院です。
「監獄実験」と呼ばれる心理実験をご存知でしょうか。
1971年、スタンフォード大学の心理学者ジンバルドーが実施した、社会心理学の実験です。

このページではスタンフォード大学で行われた「監獄実験」について、解説します。

「役割」の与える影響

役割というものが、人間の心にどんな影響を与えるのか?
これは、社会心理学の領域で、関心を集めてきたテーマのひとつです。

子どもの頃、「ごっこ遊び」や「おままごと」で遊んだ人は多いでしょう。
これらの遊びでは、自分に割り当てられた役にそって行動することが求められます。
私たち大人が、自分の社会的役割(会社員や父親など)にふさわしい行動をとることも、ある意味では、ごっこ遊びと同じようなものといえるかも知れません。

監獄実験の内容

監獄実験はこのように行われました。

被験者は看守役と囚人役に割りふられました。
大学の地下には、「模擬刑務所」設けられました。
この中で、実際の刑務所と同様の生活を送るよう指示されました。
実験への参加は、看守役は1日8時間3交替制、囚人役は交替制ではなく「24時間ずっと」参加しました。

実験開始から時間が経つにつれて、看守役は囚人役に対して残酷で非人間的な扱いをするようになり、囚人役は無気力・抑うつ的な状態に陥りました。
当初、実験は2週間続く予定でしたが、被験者たちの精神状態が悪化したため、危険と判断されて、6日で中止になりました。

監獄実験からわかること

この実験で注目すべきは、看守役・囚人役がランダムに決められたという点です。
実験における被験者の行動は、もともとの性格的な傾向によるものというより、役割にしたがってふさわしい行動をした、そして役割と自分の区別がつかなくなっていったと考えることができるでしょう。

心理学者ジンバルドーの感想

実験にはジンバルドー自身も、刑務所長役として参加していました。
彼は後年、実験をふりかえってこのように述べています。
「もっと早く実験を中止すべきだった」
「所長役に入り込みすぎて適切な判断ができなくなっていた」

実験を実施する側として実験の意図を完全に理解し、また役割というものの持つ力を熟知している専門家であるジンバルドーですら、そうなってしまったのです。
「役割」が人間の心に与える影響力は、それほどまでに強いということでしょう。

まとめ

実験は極端な事例であるにしても、似たようなことは私たちの身の回りで起きているのかもしれません。
たとえば、「会社で重要なポストに就いた人間が、私生活でも威厳ある振舞いをするようになる」といったことは珍しくありません。
私たちにとって役割というものが、どれほど心理的に影響力の大きいものであるかを示しています。

【読書&映画案内】
●『ルシファー・エフェクト~ふつうの人が悪魔に変わるとき』ジンバルドー著 「海と月社」刊
「監獄実験」の考案者ジンバルドーが初めて明かす「スタンフォード監獄実験」の全貌と悪をめぐる心理学実験の数々、アブグレイブ刑務所虐待の真相が書かれている本です。

●映画『ES エス』監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル
「監獄実験」をもとにしたドイツの映画です。リメイク作品「エクスペリメント」や、同じく監獄実験をモチーフにした「プリズン・エクスペリメント」もあります。

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