試験対策を通して、児童虐待についての理解を深めよう

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こんにちは、四谷学院の野本です。

児童虐待に関するニュースが後を絶ちません。
一般の方はもちろんですが、これから保育士を目指す方には、より深く、問題を理解していただければと思います。
保育士試験にも頻出です。

「心理的虐待」と「身体的虐待」どちらが多い?


実は、「虐待に関する調査」は、1種類ではありません。
調査資料によって結果が異なることをよく理解しておく必要があります。

保育士試験に出題される可能性がある「虐待についての資料」は以下の通りです。

1「児童相談所による児童虐待相談の対応件数」
(「福祉行政報告例」より)

2「養護問題発生理由」「被虐待経験の有無及び虐待の種類」
(「児童養護施設入所児童等調査」より)

3 虐待の事実が確認された事例についての「虐待の種別」
(「被措置児童等虐待届出等制度の実施状況」の「被措置児童等虐待の届出・通告受理件数」より)

1「児童相談所による児童虐待相談の対応件数」

「児童相談所に相談が寄せられ、対応した児童虐待相談の件数」を種別にまとめたものです。社会的養護を受けている子どもに限りません。

長い間、「身体的虐待」が多い傾向が続いていましたが、平成25年度の調査結果で「心理的虐待」が逆転して、それ以来「心理的虐待」がトップです。
平成28年度は、総数はとうとう12万件を超えました。前年度より約1万9千件も増えているのです。

なお、平成29年12月に公表された平成28年度の調査結果が、年報としては最新のものです。平成30年後期試験に続き、平成31年(2019年)前期試験も、この調査結果が出題の対象になります。

<出題例>
平成29年 神奈川県独自試験「児童家庭福祉」問16(抜粋)※統計更新
次の文は、児童虐待に関する記述である。適切な記述を○、不適切な記述を×とした場合の正しい組み合わせを一つ選びなさい。
B「平成28年度福祉行政報告例の概況」(厚生労働省)によると、平成23年度以降に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談における主な虐待者についてみると、実母の割合は減少している一方で、実父の割合が増加している。(○)
C「平成27年度福祉行政報告例の概況」(厚生労働省)によると、平成28年度中に全国の児童相談所が対応した児童虐待相談を相談種別で分類し、相談件数の多いものから順に並べると、心理的虐待、ネグレクト、身体的虐待、性的虐待の順となる。」(×)

「虐待者別構成割合」では、「実母」が約48.5%(昨年約50.8%)と最も多くなっています。「実父」の占める割合が約38.9%(昨年約36.3%)と、増加傾向にあることが特徴的です。
神奈川県独自試験での出題ですが、ぜひみなさんに知っておくべき内容でしょう。

受講生のみなさんへ
読み取り方を紹介しています。
受講生専用ページのリンク集「福祉行政報告例」で確認のポイントを公開しています。
四谷学院 受講生専用ページ

2「養護問題発生理由」「被虐待経験の有無及び虐待の種類」

「養護問題発生理由」「被虐待経験の有無及び虐待の種類」は、「児童養護施設をはじめ、施設養護や里親などによる社会的養護を受けている児童についての調査の結果」(通称「児童養護施設入所児童等調査」)にある統計です。
「児童養護施設入所児童等調査」は、「社会的養護」「子ども家庭福祉(児童家庭福祉)」といった科目では、頻出の資料なので、「聞いたことあるぞ」という方も多いのでは。

この資料で押さえておくべきは、「養護問題発生理由」、つまり施設に入所するに至った理由として、とにかく虐待が多いということです。
特に情緒障害児短期治療施設(現・児童心理治療施設)では、半数の子どもが虐待によって入所しているということを押さえておきましょう。

「被虐待経験の有無及び虐待の種類」にまとめられているのが、「被虐待経験」についてです。
「被虐待経験」つまり、これまでに虐待された経験のある子どもは、児童心理治療施設が突出して多く、約7割。
自立援助ホームや児童養護施設、児童自立支援施設、ファミリーホームがそれに続きます。
さらに、施設ごとの最も多い虐待の種類を押さえておきましょう。
施設別の最も多いものは以下の通りです。

里親、児童養護施設、乳児院、ファミリーホーム
・・・ネグレクト

児童心理治療施設、児童自立支援施設、自立援助ホーム
・・・身体的虐待

母子生活支援施設
・・・心理的虐待

3 虐待の事実が確認された事例についての「虐待の種別」

平成26年の「社会的養護」科目で出題さました。
この試験で詳しく出題されて以来、被措置児童等虐待が「児童福祉法」に規定されている ということ以外は、それほど深く掘り下げられたことはありません。
ただし、この調査では身体的虐待が1位だということはおさえておきましょう。

参考「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」

この報告書もおさえておくと安心です。
現在、平成30年8月に公表された第14次報告 が最新です。
この調査に関しては、0歳が過半数を占めることが特徴的です。
中でも、心中以外の虐待死では身体的虐待が約5割を占め、直接の死因は「頭部外傷」や「頚部絞扼」などというデータを見ると、いたましくて仕方ないですね。

虐待の件数が増えている背景

悲惨な事件が報道されたり、制度改正や広報の強化などによって、児童虐待についての認識が広まってきました。
これまで気付かれなかった児童虐待が児童相談所につながるようになりました。
また、「子ども虐待の手引き」などの改正によって、虐待とみなされる範囲が広がりました。
こういったことで、判明した虐待件数が増える背景となっています。

平成25年「子どもの虐待の手引き」などの改正

子どものきょうだいに虐待を行う、いわゆる「面前DV」が心理的虐待とみなされるようになりました。

平成28年の法改正では、「児童福祉法」等にも、特に児童虐待に関して大きく手が加えられています。
(参考)「チェック必須!平成29年後期試験以降の目玉は「児童福祉法の改正」」

すべての人が考えるべき問題ですが、特に保育士を目指す方には、一人でも多くの子どもがのびのびと成長し、「最善の利益」を享受できる環境を作っていただきたい。
それが私たちの願いです。