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債権法改正のポイント〔第09回〕~弁済の改正を押さえよう~

  公開日:2020/05/27
最終更新日:2024/03/11

※この記事は約4分で読めます。

こんにちは。四谷学院宅建講座の甲斐です。

債権法改正のポイントの第9回は「弁済」を扱います。債務者以外の第三者が、債務を弁済する場合に関する改正が特に重要です。

第三者弁済が有効となるための要件が詳しく定められました

第三者弁済とは、債務者以外の第三者が債務を弁済することです。
たとえば、B(借主)がA(貸主)から100万円を借金しているときに、Bの友人Cが、Aに対してBの借金を返済するような場合です。

民法では、第三者弁済を原則として認めています(民法474条1項)。
しかし、

第三者弁済を禁止・制限する特約がある場合(民法474条4項)
第三者弁済が債務者の意思に反する場合(民法474条2項)
第三者弁済が債権者の意思に反する場合(民法474条3項)

という3つの場面について、第三者弁済を制限しています。

第三者弁済の制限についてまとめたのが以下の表です。
債権法改正により、第三者弁済が債権者の意思に反する場合が追加されたことがポイントです。

たとえば、上記のケースのCは、Aの友人に過ぎないので「弁済をするについて正当な利益のない第三者」に該当します。
したがって、A(債務者)の意思に反する借金の支払いも、B(債権者)の意思に反する借金の支払いも、原則として不可となります。
なお、上記の3つの場面に加えて、債務の性質が第三者弁済を許さないときは、第三者弁済ができなくなります(民法474条4項)。

任意代位が生じるための要件として債権者の承諾が不要となりました

弁済による代位とは、第三者弁済をして債権者に代位した者(代位者)が、自らが債務者に対して有する求償権の範囲内で、「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利」(民法501条1項)を行使できるという制度です。

弁済による代位は、宅建試験での出題例が少ないのに対し、非常に複雑な制度です。以下の具体例を押さえておけば十分でしょう。

①B(借主)がA(貸主)から100万円を借金した。

②Aが、100万円の借金の担保として、B所有の土地に抵当権の設定を受けた。

③Bの友人Cが、Aに対して借金100万円すべてを返済し、この返済が有効であった。

④CはBに対して求償権を取得する(100万円を求償する権利を取得)。

⑤Bに対する100万円の貸金債権と、この貸金債権を担保するために設定していた抵当権が、すべてAからC(代位者)に移転する。

⑥債権譲渡の対抗要件を備えることで、Cは、自らの求償権の範囲内で、Aが有していた抵当権を実行(行使)できる。
(Cは任意代位なので、Cが貸金債権の弁済を請求したり、Aが有していた抵当権を実行したりするには、債権譲渡の対抗要件を備えることが必要である。)

弁済による代位には、
①弁済をするについて正当な利益のない第三者が代位者である任意代位
②弁済をするについて正当な利益のある第三者が代位者である法定代位
という2種類があります。
弁済による代位に関しては、債権法改正により、任意代位をするために債権者の承諾が不要になったのがポイントです。

債権の準占有者に対する弁済の名称が変わりました

債権の準占有者に対する弁済(民法478条)は、下記のように「債権の準占有者」の名称が「受領権者としての外観を有する者」に変わったことを押さえておけば十分です。
受領権者としての外観を有する者は、改正前の債権の準占有者と同じ意味であると考えてよいでしょう。

【改正前】
債権の準占有者に対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

【改正後】
受領権者(債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者をいう。以下同じ。)以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。

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