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債権法改正のポイント〔第01回〕~債権法改正の全体像を押さえよう~

  公開日:2019/11/18

※この記事は約6分で読めます。

こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。
2020年度(令和2年度)の宅建試験では、債権法改正・相続法改正という民法の大改正が出題内容に含まれます。
特に債権法改正については、約200項目の改正を伴うとされていますので、改正に対応するには大きな負担が発生すると思われます。
そこで、債権法改正に焦点を当てて、改正のポイントを随時紹介していきます。

今回は最初ですので、これまでの民法改正の変遷と、債権法改正の全体像を見ていきましょう。

これまでの民法改正の変遷を簡単に見ておこう

1.民法は約120年の歴史のある法律である

民法は1898年(明治31年)に施行された歴史のある法律です。
施行当時から「総則」「物権」「債権」「親族」「相続」という5つの編に分けられており、これは現在も変わっていません。

民法の各編のタイトル(条文番号は2020年4月を基準とする)
○総則編(1条~174条):民法全体に共通する事項を規定
○物権編(175条~398条の22):所有権・抵当権など物に対する権利を規定
○債権編(399条~724条の2):契約・不法行為など人に対する権利を規定
○親族編(725条~881条):婚姻・離婚・親子・養子などについて規定
○相続編(882条~1050条):相続分・遺言など相続に関する事項を規定

2.親族編・相続編は大きな改正が何回も行われていた

その後、1947年(昭和22年)5月3日の日本国憲法の施行にあわせて、同年12月に親族編・相続編の大改正が施行されました。
1947年の大改正は、法の下の平等(男女平等)など、新たに制定された日本国憲法の規定に反しないようにするために行われました。
親族編と相続編については、1962年(昭和37年)、1970年(昭和55年)にも、比較的大きめの改正が行われています。
2018年(平成30年)に成立した相続法改正も、比較的大きめの改正といえるでしょう。

3.相続編・物権編も比較的大きめの改正が行われていた

総則編については、1999年(平成11年)に成年後見制度に関する改正、2006年(平成18年)に公益法人に関する改正が行われました。
物権編についても、1968年(昭和46年)に根抵当権の立法化に関する改正、2003年(平成15年)に担保物権の実行手続などに関する改正が行われました。
これらは比較的大きめの改正といえるでしょう。

4.債権編はほとんど改正が行われていなかった

以上に対して、債権編については、民法の施行から約120年にわたり、保証に関する部分的な改正の他は、ほとんど改正が行われていませんでした。
そこで、債権編の規定を中心にして、約120 年間の社会経済の変化への対応を図るために従来のルールを変更する改正や、現在の裁判や取引実務で通用しているルール(主に最高裁判所の判例)を条文化する改正などを行ったのが、今回の債権法改正ということができます。

債権法改正の全体像はどのようになっているのか

1.債権法改正は消費者保護という視点で見る

今回の債権法改正によって改正された民法の規定は、簡単に言うと、債権編の規定および債権編との関係が深い総則編の規定です。
そして、債権法改正の全体を見ると、企業などの事業者と取引をする消費者の保護を図ろうとしている傾向が見られます。

この「消費者の保護」という視点で債権法改正を見ると、債権法改正についての理解が深まると思われます。

2.新規で導入される制度はさほど多くない

債権法改正は約200項目にもわたりますが、以下のように新たに導入される制度は、さほど多くありません。
宅建試験の対策としては「時効の完成猶予・更新」「個人根保証契約」が特に重要です。今の段階では名前だけでも覚えておきましょう。

以下のうち、③・④・⑥の制度は、特に事業者との間で契約を結ぶ消費者を保護する、という視点があると考えることができます。

「債権法改正によって新たに導入される主な制度
時効の完成猶予および更新(147条~161条)
②連帯債権(432条~435条の2)
個人根保証契約(465条の2~465条の5)
④事業に係る債務についての保証契約の特則(465条の6~465条の10)
⑤有価証券の分類
・指図証券(520条の2~520条の12)
・記名式所持人払証券(520条の13~520条の18)
・その他の記名証券(520条の19)
・無記名証券(520条の20)
⑥定型約款(548条の2~548条の4)

3.従来のルールを変更する改正に注意する

したがって、債権法改正の中心となるのは、「従来のルールを変更する改正」および「最高裁判所の判例を条文化する改正」であると考えてよいでしょう。
このうち「最高裁判所の判例を条文化する改正」は、実質的な変更がありませんので、これまでの学習で覚えた知識を、そのまま活かすことができます。

しかし、「従来のルールを変更する改正」は、これまでの学習で覚えた知識を、そのまま活かすことができません。

つまり、知識をアップデートすることが必要です。

例:従来のルールの変更(詐欺による意思表示の取消しの場合)

たとえば、詐欺による意思表示の取消しについては、次のように従来のルールが変更されています。

〇第三者による詐欺(民法96条2項)
【改正前】相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

【改正後】相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

〇第三者が登場した場合(民法96条3項)
【改正前】前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

【改正後】前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

双方の改正ともに、詐欺による意思表示をした者が、その意思表示を取り消すことで保護される範囲を広げるものです。
詐欺の被害に遭うのは消費者が多いですから、この改正にも「消費者の保護」という視点があると考えることができます。

次回以降のブログでは、「従来のルールを変更する改正」を中心に、個々の改正項目について、債権法改正のポイントを紹介していきます 。
お楽しみに!

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