令和4年後期保育士実技試験「造形」テーマは「豆まき・節分」課題の分析 合格のポイントを解説します!

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こんにちは、四谷学院の石田です。
令和4年後期保育士試験が終わりました。受験された皆さん、本当にお疲れ様でした。

造形分野の令和4年後期の課題は、豆まきでしたね。
保育士試験の実技の内「造形」だけは、当日に具体的な課題が発表され、しかも予想するのは難しい!ですから当日に臨む緊張度が高い試験と言えるでしょう。
ちなみに「音楽」「言語」は、課題があらかじめ発表されているとはいえ、こちらも独特の緊張感ですよね。

今回の内容は、こちらの動画でもご覧いただけるようになっています。
・令和4年後期実技試験講評動画

この記事で、今回の「造形」試験を振り返るとともに、これから保育士試験を目指す方の効率的な練習を考える上で、役立てていただければと思っています。
では早速いきましょう!

令和4年後期造形の課題は「豆まき」

当日出題された造形表現の問題文は以下のとおりです。

【事例】を読み、次の3つの<条件>をすべて満たして、解答用紙の枠内にその情景を描きなさい。

【事例】M保育所の3歳児クラスの子どもたちは、保育室内で、大きな鬼の顔が貼られた壁に向かって豆まきを楽しんでいます。保育士は、そばで見守りながら遊びに加わっています。

【条件】
1.【事例】に書かれている保育の様子がわかるように描くこと。
2.子ども3名以上、保育士1名以上を描くこと。
3.枠内全体を色鉛筆で着彩すること。

課題のポイント

今回は豆まきがテーマでした。
子ども同士や保育士とのやり取りなど、ストーリー設定は特にありませんでした。「豆まき」と聞いて多くの人がイメージできるような情景がテーマになっています。

今回、注意すべき点は、
大きな鬼の顔が貼られた壁に向かって豆まきを楽しんでいます
という部分です。

保育士さんが鬼のお面をかぶって鬼役をする、というパターンの豆まきではないという点に注意しましょう。
うっかりイメージ先行で描いてしまわず問題文をしっかり読んでいれば、求められている情景を正しくイメージできたと思います。

子どもの年齢は3歳

今回は「3歳児クラス」という指定がされました。
例年通りと考えてよいでしょう。

豆まきの様子

事例をもう一度見てみましょう。
赤字部分に注目してください。

M保育所の3歳児クラスの子どもたちは、保育室内で、
大きな鬼の顔が貼られた壁に向かって豆まきを楽しんでいます。
保育士は、そばで見守りながら遊びに加わっています。

構図の難しさ

保育室の壁に「大きな鬼の顔」が貼られている様子を描きますので、ある程度構図が決まってくるかと思います。
「壁」の面積を大きめにとる必要があるので、普段、壁と床の境目(基底線)を上の方に書いている方は、当日の調整が必要だったのではないでしょうか?
基底線をやや下に描くことで、壁の面積が広くなり、「鬼の大きな顔」を描きやすくなるかと思います。その分、床が狭くなるので奥行きが出にくいかもしれません。

画面の奥に壁を描き、そこに「鬼の顔」を貼った場合、子どもたちは鬼に向かって豆を投げる、つまり、奥に向かってポーズをとることになります。
その場合、子どもの体の向きは、後ろ向きや横向きになりがちです。子どもを全員後ろ向きに書いてしまった、顔が見えない…となるということがあると望ましくありませんので、正面を向いた子ども、横を向いた子ども等が描けるとよいでしょう。この点、少し配慮が必要だったかと思います。

画面の斜めに壁を描くと、子どもの顔やポーズは書きやすくなりますが、壁や床など普段書き慣れていない構図であり、苦戦されたケースもあるようです。

壁と人物の位置関係を考える必要があり、やや構図が難しいテーマだったかもしれません。

「鬼の顔」をどう描く?

「鬼の顔」については、以下のような迷いもあったようですが、いずれも致命的なミスとは言えない、「鬼らしさ」が伝われば問題ない!という四谷学院の見解です。

  • 鬼の顔が小さい
  • 鬼の全身を描いた
  • 鬼の色が赤・青以外
  • 鬼の髪の毛がない
  • 鬼の角がない

「豆」はリアル?代用品?

また、「豆まき」については、以下のような描き方の違いが見られましたが、いずれも「豆まき」というテーマには沿っていると考えています。

  • 大豆をまく様子を描いた
  • 大豆の代わりのボールを描いた
  • 落花生を描いた
  • 袋入りの豆を描いた

節分の伝統行事である「豆まき」は、大豆をまくことが多いようですが、地域によってさまざまです。
(ちなみに、筆者の地域では「落花生」をまくのが主流でした。)
また、近年は誤飲・誤嚥の事故を防ぐ、食物アレルギー対策といった安全面、落ちたものを食べるという衛生面などから、パッケージ入りの豆を利用したり、豆に見立てたボール等を使用したりする園・学校、ご家庭も増えています。

今回の試験では「3歳児クラス」でしたので、現実的には大豆(煎り豆)を利用するのは望ましくないのかもしれませんが、「テーマが伝わる絵を描く」という意味でも、伝統的行事の姿を描くという意味でも、致命的な減点になるとは考えにくいでしょう。そうした代用品について考え、知っておくよい機会だったのではないでしょうか?

保育園での「豆まき」の実際

「子どもの安全を第一に考えなければいけない保育士としてふさわしくないのでは?」
と心配されている方もいらっしゃるとは思いますが、あくまで「絵は、絵」です。実際に大豆をまいたわけではありません!
事例内で、「豆に見立てたボールをまいています」「豆の代わりに新聞紙を丸めたものを用意しました」「個別包装の豆菓子」などの記載があれば、もちろん指示通りに描かなければいけませんが、今回はそうした指定はありません。
造形表現の技術を見るための試験ですから、その点が一番に考慮されるはずです。

参考:保育士試験「子どもの食と栄養」
令和4年前期 問15 E.節分の豆まきは個包装されたものを使用するなど工夫して行い、子どもが拾って口に入れないように、後片付けを徹底する。(答え○)
(「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」(令和3年1月:消費者庁))

令和4年前期 問17 D.原因物質を食べるだけでなく、吸い込むことや触れることも食物アレルギー発症の原因となるため、食事以外での食材を使用する時(小麦粉粘土等を使った遊び、豆まきなど)は、それぞれの子どもに応じた配慮が必要である。(答え○)
(「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」( 2019年:厚生労働省)における食物アレルギーに関する記述)

保育士の様子


今回は、保育士の様子については、
保育士は、そばで見守りながら遊びに加わっています
と書かれていました。

例えば、一緒に豆をまいている、豆の入った容器を持ってあげる、鬼を指さしている、横から声をかけている‥‥などなど、色々な表現があるでしょう。

保育士を表現する際には「何らかの形で子どもにかかわっている様子」を描くのが望ましいといえます。今回も、保育士の動きについては比較的自由度の高い指定でした。
「そばで見守る」という表現があることから、子どもたちから少し離れて立っている様子や、ニコニコしながら眺めている様子を描かれた方が多いようです。
一方で、積極的に豆まきに関わっている保育士を描かれた方もいらっしゃり、それもまたよいかと思います。

子どもは3人以上

[条件]には
子ども3名以上、保育士1名以上を描くこと。
とあります。
人数指定は、例年通りでした。子ども3名、保育士1名を描けば、条件を満たすことができます。
前回と同様に、わかりやすい条件設定でした。

場所は「保育室内」

「大きな鬼の顔が貼られた壁」
という表現が事例内にあり、「壁」があることから保育室内を比較的スムーズにイメージできたかと思います。

以下のようなことが、背景のポイントとなるでしょう。

  • 建物の外ではなく「中」である
  • 子どもたちが遊ぶのに適切な場所である
  • 保育園らしい壁飾り
  • 2月3日節分の時期の昼間

これまで、保育士試験の事例に季節の指定は少なかったのですが、今回は「豆まき」、つまり2月3日の節分の時期と想像できます。
とはいえ、色々な園の方針もありますので、服装は半袖でも長袖でも、また裸足でも上履きでもいずれでも問題ないでしょう。

※参考:2019年前期テーマ「夏の日、野菜の収穫や水やりの様子」

合格通知の発送日

実技試験結果通知書(合格通知書・一部科目合格通知書)は令和5年1月13日(金)~1月19日(木)の期間に郵送されます。

子どもの遊びが出題されています

今回は、日本の伝統文化の関わる季節行事が出題されました。
最近は「子どもの食と栄養」の科目でも、季節食についてが出題されがちですが、保育所では、年間行事を積極的に実施して、子どもたちに日本の文化や慣習を伝えています。
特に伝統文化・伝統行事については、家庭で実施しにくいケースも増えています。保育活動の中に取り入れることによって、地域との交流・高齢者との交流なども実現することができます。
季節感や日本の文化について学ぶ大切な機会でもあり、特に五領域の「言葉」「環境」に関連が深い部分です。

伝統行事と子どもの遊びについては、今後の注目です!!

少しだけ実務的なお話をすると、今回、豆まきを行うにあたっては、
感覚過敏のあるお子さんへの指導についてなど注意が必要になってきます。

感覚過敏とは、触覚や聴覚などの感覚が敏感なお子さんのことです。普段、大豆や落花生などに触る機会が少ないお子さんも多くなっています。初めての感触、触感に対して、強い抵抗を示すお子さんもいます。それは、触覚に過敏さから来ているのかもしれません。
「大丈夫だよ」「平気だよ」と言って、無理に参加させてしまいがちですが、大きなストレスを感じているかもしれません
黒板をひっかく音に対して、「大丈夫」「気にしないで」と言われても、我慢できるものではありませんよね。
無理に参加させないこと、そして「これならできる!」をいうことを見つけてあげて、活動に参加できるように工夫しましょう。

保育園では「気になる子ども」が増えているといわれています。「発達障害」という診断名が必ずしもなく、保護者もまだ気づいていないケースもあります。
子どもの育ちに気づき、成長を促すのは、保育のプロの重要な仕事です。
保育士さんたちの少しのフォロー、適切な支援で子どもは大きく変わる可能性を持っています!!

四谷学院では、保育士さん向けの発達障害児支援士資格認定講座を開講しています。
現代日本において、保育士が身につけるべきスキル・知識の1つとして、発達支援は無視できません。
自閉症や発達障害について正しい知識を身につけ、子どもたちの笑顔を増やしていきましょう。

ぜひこの機会に発達障害児支援士についても知っていただけると嬉しいです。