こんにちは。四谷学院通信講座の甲斐です。
宅建試験では、宅地建物取引業法35条に規定する重要事項の理解が必須ですが、その内容が多岐にわたるので、理解が進まないことが多いようです。
そこで、不定期にはなりますが、複数回に分けて、重要事項説明書のひな型を示しながら、売買・交換と貸借とでは重要事項にどのような違いがあるのかを見ていきます。

国土交通省は重要事項説明書のひな型を公開しています

国土交通省は、重要事項説明書のひな型を、以下の(1)~(4)に区別して公開しています。
【参照】国土交通省「宅地建物取引業法:法令改正・解釈」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000268.html

(1)重要事項説明書(売買・交換
(2)重要事項説明書(区分所有建物の売買・交換
(3)重要事項説明書(宅地の貸借
(4)重要事項説明書(建物の貸借

このうち(2)のひな型は、(1)のひな型に区分所有建物に特有の事項(一棟の建物又はその敷地に関する権利及びこれらの管理・使用に関する事項)を追加しただけで、それ以外の事項は(1)と共通しています。
そこで、[売買・交換][宅地の貸借][建物の貸借]の3つに分けて、重要事項を比較していきます。関連する過去問題もあわせて掲載していますので、問題を解きながら押さえていきましょう!

《以下の全ての画像は、クリックすると元サイズの見やすい画像が表示されます。》

取引の態様

[売買・交換]の「当事者」は、宅地建物取引業者が自ら売主などとなる場合です。自ら売主などは宅地建物取引業に該当しますね。
しかし、自ら貸借は宅地建物取引業に該当しないので、[宅地の貸借][建物の貸借]には「当事者」の欄がありません

[売買・交換]

[宅地の貸借][建物の貸借]

都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要

法令に基づく制限の概要は、[売買・交換][宅地の貸借]がほぼ共通した内容であるというのが特徴です。
[売買・交換]では重要事項であるが、[宅地の貸借]では重要事項でない、という法令に基づく制限もいくつかありますが、宅建試験対策としては、下記のひな型にある法令に基づく制限を押さえれば十分でしょう。
しかし、[建物の貸借]には「都市計画法」「建築基準法」という記載がありません[建物の貸借]の場合は、都市計画法や建築基準法に基づく制限が重要事項に含まれていないからです。

[売買・交換]

[宅地の貸借]

[建物の貸借]

[宅地の貸借]の場合は、借りた宅地に建物を建築する場面などにおいて、都市計画法や建築基準法などのさまざまな法令に基づく制限を受けますので、説明すべき重要事項が非常に多くなります。
しかし、[建物の貸借]の場合は、その建物を利用するだけであり、利用だけでは法令に基づく制限を受けるケースが多くないので、説明すべき重要事項が少なくなります。

【問題】建物の売買の媒介の場合は、建築基準法に規定する建ぺい率及び容積率に関する制限があるときはその概要を説明しなければならないが、建物の貸借の媒介の場合は説明する必要はない。(平成22年度問35)
【解答】〇

「法令名」の欄に記載される可能性のある法律名

上記の図の「法令名」の欄に記載される可能性のある法律名も、ひな型で示されています。宅建試験で出題されたことはあるのですが、全てを覚えるのは非効率的です。
[建物の貸借]の場合は、「法令名」の欄に記載される可能性のある法律名が3つしかありませんので、余力があれば、これらを覚えておいてもよいですね。

[売買・交換]

[宅地の貸借]

[建物の貸借]

[2023年2月28日追記]
令和4年9月に「重要土地等調査法」が施行され、売買・交換の場合における重要事項に追加されました。

重要事項に追加された重要土地等調査法とは何か

【問題】宅地の貸借の媒介を行う場合、当該宅地が流通業務市街地の整備に関する法律第4条に規定する流通業務地区にあるときは、同法第5条第1項の規定による制限の概要について説明しなければならない。(平成28年度問36)
【解答】〇

造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域

造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域の内外は、[売買・交換][宅地の貸借」「建物の貸借」に共通して重要事項に含まれています。宅建試験でも頻繁に出題されていますので、しっかりと押さえておきましょう。
とりわけ造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域の「」にあると、そこは災害発生の危険が高く、そのような情報は[建物の貸借]でも知っておくべきものだからです。

[売買・交換]

[宅地の貸借]

[建物の貸借]

【問題】建物の売買の媒介を行う場合、当該建物が宅地造成等規制法の規定により指定された造成宅地防災区域内にあるときは、その旨を説明しなければならないが、当該建物の貸借の媒介を行う場合においては、説明する必要はない。(平成23年度問32)
【解答】×

【問題】宅地の売買の媒介の場合は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第6条第1項により指定された土砂災害警戒区域内にあるときはその旨を説明しなければならないが、建物の貸借の媒介の場合は説明する必要はない。(平成22年度問35)
【解答】×

【問題】建物の貸借の媒介を行う場合、当該建物が津波防災地域づくりに関する法律第23条第1項の規定に基づく津波防護施設区域に位置しているときはその旨を説明する必要があるが、同法第53条第1項の規定に基づく津波災害警戒区域に位置しているときであってもその旨は説明する必要はない。(平成26年度問34)
【解答】×

初めての方も、リベンジの方も、手厚いサポートを受けながら宅建試験の合格を目指しませんか?
四谷学院の宅建講座について詳しくはホームページをご覧ください。