こんにちは、四谷学院のこども環境管理士の林田です。
池の水を全部抜いてお掃除をするテレビ番組や、本来日本にいないはずの危険な生き物の特集ニュースなど、最近「外来種」「外来生物」という言葉をよく耳にするようになりました。
この記事では、外来種とは何を指すのか?そしてどんな影響を及ぼすのか?ということについて、詳しくお話していきます。
外来種とは?
まず、外来種の定義について説明を確認しましょう。
こんな風に定義できます。
外来種とは、人の活動によって、ほかの地域から入ってきた生きもののことを指します。
国外から持ち込まれた生きものだけでなく、国内のある地域から、もともといた地域に持ち込まれた生きものも外来種となります。「エコシステム」第162号より (公財)日本生態系協会
なお、「外来種生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)」は、明治時代以降に国外から持ち込まれた外来種を対象にした法律です。
色々調べていくとお気づきの方もいらっしゃると思いますが、例えばイチョウ。街路樹や大学の構内の並木としても有名ですよね。しかし、イチョウは厳密に言えば在来種ではありません。平安時代から室町時代頃に日本に渡ってきたもののようです。どんな風に伝来したのかは定かではありませんが、緩やかに日本の生態系になじんでいったのではないか?と思われます。
ポイントとして、人間の活動によって「いきなり」「よその地域から」持ち込まれると、適応が追い付かずに生態系のバランスが崩れてしまうということが問題となっています。
外来種による影響
さて、外来種が入ってくると生態系が崩れてしまうことがわかりました。では、具体的にどのように困ってしまうのでしょうか?外来種のリスクについて考えてみましょう。
農林水産業被害
まずは、農林産業の被害が挙げられます。
「アライグマ」は、元はペットとして連れてこられ遺棄や脱走によって野生化したものが多く、雑食性の外来哺乳類のアライグマの被害は大きく、分布の拡大・生息巣の増加がみられています。スイカ、メロン、トウモロコシなどの農産物の被害のほか、養殖魚などへの食害があります。被害額は何億円にものぼると言われています。
また、西日本に生息する「ヌートリア」は、稲、ニンジン、サツマイモなどへ被害を与えています。泳いでいるところは「ラッコみたい、カワイイ」と言われることもあるようですが、実は、特定外来生物で駆除の対象となっています。
生活環境等被害
外来種は、感染症の媒介になることがあります。
たとえば、アライグマはイヌ科の動物で、狂犬病のキャリア(媒体)であることが知られています。そのほかにもダニ、回虫症など様々な感染症の危険があります。
また、東京都環境局のホームページではオーストリア原産の外来種「セアカゴケグモ」について、セアカゴケグモの雌に咬まれると全身症状(痛み、発汗、発熱)や皮膚の壊死など重症化する危険性もあるとして、注意を呼び掛けています。
生態系被害
グッピーはベネズエラ・ガイアナ原産のきれいな熱帯魚ですが、これも外来種です。在来の小さな魚を食べてしまい、もともとあった生態系を壊してしまいます。
また、オオバナミズキンバイはアメリカからきた外来種の水草で、水上・水中にマット状に厚く繁茂しするため、ほかの植物の生育を阻害します。つまり、在来の水草が負けてしまうわけです。さらに、茎が水中に密生するため蚊の生息場所となったり、堆積物が溜まって水の流れを阻害したりします。環境省では「希少種7を含む54種の在来種と重なることから、これらの植物に影響を及ぼすおそれが高い。」と警鐘を鳴らしています。
外来種が及ぼす影響:まとめ
ここまで見てきたように、外来種は私たちの生活に大きく影響を与えます。しかし、それはもともとは、人間が持ち込んだものです。「外来種=悪者」というわけではありませんが、外来種と在来種を区別して考えることは、生態系を考える上でとても重要なことだと言えるでしょう。同様に園芸種や食用の野菜などとも区別して考えることも大切です。
生態系は多様です。しかし、ただいれば良いというわけではありません。それぞれの地域で、それぞれの特性を維持していくことが大切です。
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