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宅建業者による「自ら貸借」

  公開日:2018/01/25
最終更新日:2024/04/12

※この記事は約4分で読めます。

こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。

今回は、宅建業者(宅地建物取引業者)による「自ら貸借」についてお話したいと思います。

前提:宅建業を営むには

以前に、「宅地建物取引業(宅建業)ってそもそも何?」において、宅地建物取引業に当たる行為を詳しく見ていきました。

宅地建物取引業ってそもそも何?

宅地建物取引業に当たる行為をするときは、宅建業の免許(宅地建物取引業の免許)を取得することが必要です(宅建業法12条1項)。
もし宅建業の免許を取得せず、無免許で宅地建物取引業を営んだ場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(宅建業法79条2号)。
(なお、懲役と罰金の両方が科されることもあり、これを「併科」といいます。)
つまり、無免許で宅地建物取引業を営むことは、それだけで窃盗や詐欺などと同じく犯罪となるのです。

宅建業の免許を受けた者=「宅建業者」

宅建業者(宅地建物取引業者)とは、宅地建物取引業の免許(宅建業の免許)を受けた者を指します。
宅建業者となるのは会社(株式会社など)が多いですが、個人(個人事業主)が宅建業者となることも可能です。
免許を取得して宅建業者になると、宅地建物取引業を営んだことだけを理由に、先ほど説明した刑罰を科されることはなくなります。

「自ら貸借」には宅建業法が適用されない

宅建業者に対しては、宅建業法(宅地建物取引業法)のさまざまな規制が及びます。
たとえば、宅建試験で毎年出題される宅建業者に対する規制として、宅建業法35条の重要事項説明および重要事項説明書(35条書面)の交付、宅建業法37条の契約書面(37条書面)などがありますね。

しかし、自ら貸借(自分が貸主となる貸借)が宅地建物取引業に当たらないことから、宅建業者が自ら貸借(賃貸)をするときは宅建業法の規制が及ばないと考えられています。
よって、宅建業者が自ら貸借をするときは、重要事項説明、重要事項説明書の交付、契約書面の交付を行わなくても宅建業法に違反しないことになるのです。

たとえば、次のような問題が過去の宅建試験で出題されています。

宅建業者Aが自ら貸主として宅地の定期賃貸借契約を締結した場合において、借賃の支払方法についての定めがあるときは、Aは、その内容を37条書面に記載しなければならず、借主が宅地建物取引業者であっても、当該書面を交付しなければならない。
(平成27年度 問38)

この問題は「自ら貸借」のケースですので、宅建業者Aには宅建業法の規制が及ばず、37条書面の交付は不要です。
よって、問題の正答は「×」となります。

宅建業者の貸借媒介・代理では宅建業法が適用

「自ら貸借」とは異なり、Aが賃貸人、Bが賃借人というAB間の宅地建物の貸借を、宅建業者が媒介または代理する行為は、宅地建物取引業に当たることから、宅建業者が貸借を媒介または代理するときは、宅建業法の規制が及びます
よって、宅建業者が貸借の媒介または代理をするときは、重要事項説明や契約書面の交付を行わないと宅建業法に違反することになるのです。

このような「自ら貸借」との違いは、試験でしばしば出題されていますので、問題文を読むときは注意が必要ですね。

代理と媒介の区別については『説明できますか?「代理」と「媒介」』を参照すると理解が深まります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
四谷学院では、今回の「自ら貸借」をはじめ、宅建試験の頻出問題をたっぷり搭載した、『演習トレーニング』をご用意しています。
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