こんにちは。四谷学院通信講座の甲斐です。
建築物の省エネ対策を強力に進めるため、令和4年(2022年)6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」(改正建築物省エネ法)が公布されました。

改正建築物省エネ法の中には、宅建試験で出題される建築基準法の改正も含まれています。しかし、改正の大部分は「公布の日から3年以内に施行」とされていますので、宅建試験に出題されるのは令和7年度(2025年度)以降になると予想されます。

しかし、一部の改正については、令和5年(2023年)4月1日までに施行されています
今回は、令和5年4月1日までに施行された建築基準法の改正のうち、タイトルの「住宅の採光規定の見直し」について見ていきます。

建築基準法から「住宅の居住のための居室は7分の1以上」が削除された

従来は、居室の採光に有効な部分の面積について、建築基準法に「住宅の居住のための居室は7分の1以上」という割合が存在していました。

改正前の建築基準法28条1項
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。(ただし書は省略)

しかし、令和4年6月に成立し、令和5年4月1日に施行された建築基準法の改正により、「住宅の居住のための居室は7分の1以上」という割合が建築基準法から削除され、「5分の1から10分の1までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上」という割合だけが残されました。

建築基準法28条1項
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、五分の一から十分の一までの間において居室の種類に応じ政令で定める割合以上としなければならない。(ただし書は省略)

本改正により、建築基準法からは「住宅の居住のための居室は7分の1以上」という割合が存在しなくなりました。
そして、どの程度以上の割合にするかについては、5分の1から10分の1の範囲内で、政令建築基準法施行令)が規定することになりました。

政令・告示によって「住宅の居住のための居室」の割合が定められた

政令が定める原則(7分の1以上)

その後、令和4年12月に成立した建築基準法施行令政令)により、「住宅の居住ための居室については7分の1以上」という原則が設けられました。
この原則は、従来の建築基準法の割合(7分の1以上)と同じです。

建築基準法施行令19条3項
法第二十八条第一項の政令で定める割合は、次の表の上欄に掲げる居室の種類の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる割合とする。ただし、同表の〔一〕の項から〔六〕の項までの上欄に掲げる居室のうち、国土交通大臣が定める基準に従い、照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置が講じられているものにあつては、それぞれ同表の下欄に掲げる割合から十分の一までの範囲内において国土交通大臣が別に定める割合とする。
(〔一〕の項及び〔二〕の項は省略)
〔三〕の項 住宅の居住のための居室 七分の一
告示が定める例外(10分の1以上にできる場合もある)

さらに、令和5年2月に公表された国土交通大臣が定める基準告示)により、「床面において50ルックス以上の照度を確保できる照明設備を設置している居室は10分の1以上」に緩和するとの例外が設けられました。
この例外により、一定以上の照度を確保することができる住宅のための居室の窓を、従来よりも小さくすることができます。

照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準等を定める件の一部を改正する件(令和5年国土交通省告示第86号)
第一 照明設備の設置、有効な採光方法の確保その他これらに準ずる措置の基準
(一~三は省略)
四 住宅の居住のための居室にあつては、床面において五十ルツクス以上の照度を確保することができるよう照明設備を設置すること。

第ニ 窓その他の閉口部で採光に有効な部分の面積のその床面積に対する割合で国土交通大臣が別に定めるもの
(一は省略)
二 第一第三号又は第四号に定める措置が講じられている居室にあつては、十分の一とする。

これらの原則・例外は、前述した建築基準法の改正とともに、令和5年4月1日に施行されています。

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