こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。
先日は、営業保証金と弁済業務保証金の供託手続の違いを見ていきました。
今回は、宅建業者と取引をした相手方が、供託所から一定額の支払いを受けるという還付手続について、両者の違いを見ていきましょう。
営業保証金と弁済業務保証金の供託手続の違いは、下記の記事を参照してください。
営業保証金や弁済業務保証金の還付請求ができるのは誰か?
宅建業者と取引をした相手方が還付請求権者
営業保証金や弁済業務保証金の還付を請求できる人(還付請求権者)は、どちらも宅建業者(宅地建物取引業者)との間で宅建業(宅地建物取引業)に関する取引をした人です。
つまり、宅建業者と取引をした相手方ですね。
具体的には、宅建業は下記の(1)又は(2)の取引を指すので、宅建業者との間で(1)又は(2)に関する取引をして生じた債権が還付の対象となります。
(2) 宅地建物の売買、交換または貸借の代理または媒介
例えば、A(売主)が、宅建業者B(買主)に土地を売却したが、Bが土地の売買代金を支払ってくれないとします。
この場合、AのBに対する土地の売買代金債権が、宅建業者との間で(1)に関する取引をして生じた債権に当たるため、Aは、営業保証金や弁済業務保証金の還付請求権者に該当します。
宅建業の意味については、下記の記事を参照すると理解が深まります。
宅建業者は還付請求権者から除外される
例外として、宅建業者と取引をした相手方が宅建業者である場合には、営業保証金や弁済業務保証金の還付を請求することができません。
上記の事例において、Aが宅建業者である場合には、営業保証金や弁済業務保証金の還付請求権者から除外されます。
この場合、たとえ宅建業者Bが土地の売買代金を支払わないとしても、Aは、営業保証金や弁済業務保証金の還付を請求できません。
以下では、営業保証金や弁済業務保証金が還付されるまでの過程を、簡単に見ていきましょう。
営業保証金の還付手続
営業保証金の場合は、②還付請求とあるように、還付請求権者が直ちに供託所に対して還付請求を行います。
⑥2週間以内に補充供託は、③還付によって、宅建業者が供託している営業保証金が不足した場合に、不足分の営業保証金を補充する手続です。
還付請求権者が供託所から還付を受けることができる額は、宅建業者が供託した営業保証金の額が上限です。
例えば、宅建業者(本店のみ)が営業保証金として1,000万円を供託している場合、還付請求権者は、たとえ還付の対象となる債権が2,000万円であっても、供託所から還付を受けることができる額は1,000万円が上限です。
すなわち、供託所が、宅建業者に代わって、還付請求権者のために債権全額を還付するとは限らないわけです。
弁済業務保証金の還付手続
直ちに供託所への還付請求はできない
弁済業務保証金の場合は保証協会が登場するため、営業保証金と比べると、かなり複雑な手続となっています。
営業保証金との大きな違いは、保証協会への②還付金額の認証の申出とあるように、還付請求権者が、直ちに供託所に対して還付を請求できるわけではないという点です。
還付請求権者は、まず保証協会から③還付金額の認証を受けて、それから供託所に対して④還付請求を行うことになります。
還付請求権者が供託所から還付を受けることができる額は、宅建業者が社員でないとしたならば、その宅建業者が供託しなければならない営業保証金に相当する額が上限です。
例えば、本店だけで宅建業を営んでいる社員A(宅建業者)は、社員でないとすれば営業保証金として1,000万円を供託しなければなりません。
したがって、還付請求権者が社員Aに対して還付の対象となる債権を有している場合、供託所から還付を受けることができる額は1,000万円が上限です。
営業保証金の補充供託に対応するのが「還付充当金の納付」
さらに、営業保証金の補充供託に対応する手続についても、弁済業務保証金の場合はかなり複雑です。
還付請求権者に対する還付があった場合は、保証協会が、供託所に対して②弁済業務保証金の供託を行います。
弁済業務保証金として保証協会が供託する額は、供託所が還付請求権者に対して還付した額(還付金相当額)です。
それから、弁済業務保証金を供託した保証協会が、社員(宅建業者)に対して③還付充当金の納付の通知を行います。
保証協会が還付充当金として支払いを請求する額は、実際に保証協会が供託をした還付金相当額です。
還付充当金の納付の通知があった場合、社員は、保証協会に対して、還付充当金を④2週間以内に金銭で納付しなければなりません。
もし2週間以内に納付しないと、保証協会の社員の地位を失います。
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