こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。

今回は、不動産に関連する重要テーマになっている「空き家対策」について取り上げます。
というのも・・・
最近の宅建試験に関係する法改正の多くが、この「空き家対策」を目的の一つにしているからです。

2019年宅建合格を目指す方は、最新の法改正を理解する上でもぜひチェックしてください。

最近の法改正は「空き家対策」がキーワードです

テレビや新聞、あるいはネットなどでニュースを目にされることでしょう。
空き家が多すぎることが社会問題になりつつあります。
空き家、つまり誰も住んでいない家が増加しています。

住宅全体の13.5%が空き家!

5年ごとに実施される「住宅・土地統計調査」(総務省)によると、平成25年(2013年)の全国の住宅全体は、約6,100万戸のうち約820万戸が空き家である、という統計結果が出ています。
つまり、日本にある住宅のうち13.5%が空き家なのです。

空き家の数は現在も増加傾向にあって、平成30年(2018年)の統計結果においては、空き家の数が1,000万戸に達するのではないかと言われています。

なぜ空き家が増えるのか?

空き家が増加している原因の一つは「少子高齢化」であると言われています。

子どもが実家から出て独り立ちした後、その子どもが実家に戻らないので、両親が亡くなると実家が空き家になる、というのが典型的なケースです。
特に地方の過疎化に連動するような形で、空き家も増え続けています。

空き家は地方だけの問題でなく、現在は都市部でも問題になっています。
都市部に住んでいた高齢者などが亡くなった後、新たに住む人が見つからず、そのまま空き家になっているようなケースです。

空き家を放置する危険性

空き家には誰も住んでいませんから、人の管理・監視が行き届かなくなります。そのため、柱に腐敗が生じるなどして、倒壊のおそれが生じたり、悪臭を放ったりすることがあります。実際に空き家が倒壊するケースもあるようです。
さらに、空き家は放火のターゲットにされやすく、隣家が延焼にあってしまうなど、人の生命・身体・財産に直接危険が及ぶこともあります。

このように、空き家を放置しておくことはとても危険であることから、社会的な問題となっています。

空き家対策の基本「空き家法」

空き家対策に関する重要な法律として、平成26年(2014年)に成立した「空き家対策等の推進に関する特別措置法」(空き家法)があります。

空き家法は宅建試験で出題されませんので、概要だけを見ておきましょう。

空き家法は、空き家のうち特に危険なものを「特定空き家等」に指定する制度があります。特定空き家等とは、次の(1)~(4)のどれかに該当する空き家を指します。どれか1つでも該当すれば、特定空き家等として市町村が指定します。
(1) 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(2) 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(3) 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
(4) その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家に指定された空き家は、市町村による立入調査の対象になります。
さらに、市町村による「指導→勧告→命令」の手続きを経て、それでも特定空き家等に該当する状態を解消できなければ「代執行」が行われます。代執行の手続きによって、市町村が強制的に空き家を解体します。

特定空き家等は固定資産税の軽減措置の対象外!?

宅建試験と関連するところで、1つ確認しておきましょう。

特定空き家等に指定された後に「勧告」を受けてしまうと、住宅用地の特例を受けることができなくなります。
住宅用地の特例とは、住宅用地(住宅・アパートなど人が居住するための家屋の敷地として使用されている土地)の固定資産税を軽減する措置です。具体的には、住宅用地の課税標準額を6分の1(200㎡以下の部分)または3分の1(200㎡超の部分)にするものです。

住宅用地の特例を受けることができなくなると、固定資産税が大幅に上がるという不利益が生じます。このような不利益を予告することで、空き家の管理・監視を適切に行ってもらおうとしているのです。

空き家対策を目的とする宅建試験関連の法改正は?

最後に、空き家対策に関連する過去の法改正を2つ見ていきましょう。
空き家対策は依然として必要不可欠の状況ですから、今後も空き家対策を目的とした法改正が出てくることが予想されます。

建物状況調査(インスペクション)

建物状況調査(インスペクション)とは、中古住宅(既存建物)の構造耐力上主要な部分などの状況を調査することです。
建物状況調査という全国統一の制度を導入することで、消費者側が安心して中古住宅の取引を行える環境の整備を図ろうとしています。

そして、中古住宅には「空き家」も含まれますから、建物状況調査は、空き家の取引を安心して行えるようにするための制度でもあるといえます。
安心して空き家などの取引を行える環境が整えば、その取引件数も増えていくであろう、ということでしょう。

低廉な空家等の報酬額の特例

低廉な空家等の報酬額の特例とは、低廉な空家等(税抜400万円以下の金額の宅地・建物)の売買の媒介・代理をする場合に、売主側の宅建業者に適用される報酬額の特例です。
交換は特例の対象に含まれますが、貸借は特例の対象外です。

この報酬額の特例を受けるためには、宅建業者による事前の説明と売主の同意があることや、現地調査の費用が発生していることなど、所定の要件を満たすことが必要です。

たとえば、売買の媒介をする宅建業者が、この特例の適用を受ける場合、売主から受領できる報酬額の上限は、宅地・建物の金額にかかわらず「税抜18万円」となります。
この報酬額の特例は、空き家の取引に関する報酬額をアップすることで、宅建業者に空き家の取引にもっと参加してもらおう、という目的があるでしょう。

まとめ:宅建試験から見る「空き家対策」

いかがですか?
空き家は増加傾向にあり、今後も社会的な課題となっていくことでしょう。
必然的に、不動産関係者は密接な問題となり、法律の改正にともなって宅建試験にも大きな影響が出てくると考えられます。
さらに、不動産取引の専門家として空き物件について所有者にアドバイスしたり、司法書士や行政書士、建設業者、金融業者などと連携して、この課題に取り組んでいくことが、宅建士に求められていくでしょう。

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