本記事は、令和元(2019)年度宅建試験に向けて、2018年11月から2019年2月頃に学習をスタートする方に向けて公開した内容を、民法を学習するすべての宅建試験の受験生の方に向けた内容に再編集したものです。

こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。
今回は、宅建試験の合格に向けた民法学習のポイントを2つご紹介します。

登場人物の法律関係を押さえよう

登場人物が3人以上になった場合は要注意!

宅建試験の民法の問題においては事例問題が多く見られます。
A・B・Cなどの人物が登場し、登場人物同士の法律関係を出題するというものです。
特に登場人物が3人以上になると、それぞれの法律関係が複雑になってきます。

テキストの学習や問題演習などをするときは、条文や判例の知識が「誰と誰との法律関係について適用されるものなのか」を丁寧に確認しながら、学習を進めていきましょう。

具体的な出題例

実際に、平成30年度宅建試験の問題を見て、誰と誰との法律関係について、どの条文や判例が適用されるのか、という点を確認してみましょう。

【平成30年度宅建試験 問1 肢3】
AB間の甲土地の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない。

この問題は、甲土地が「A⇒B⇒C」へと順番に売却された事例です。
そして、AB間の売買契約が仮装譲渡であることから、虚偽表示(民法94条)の条文が適用される事例です。

AB間の売買契約に関しては、AとBが虚偽表示の当事者ですから、「相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする」という条文(民法94条1項)が適用されます。
したがって、AB間の売買契約は虚偽表示により無効となります。

これに対し、BC間の売買契約に関しては、虚偽表示の当事者であるAとBから見たときに、Cが「第三者」(虚偽表示の当事者ではない人)にあたることがポイントです。
そうすると、「虚偽表示による無効は、善意の第三者に対抗することができない」という条文(民法94条2項)が適用されることがわかります。

そして、善意は「知らない」ことですから、問題文のとおり、「Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を対抗することができない」ことになります。

似ている制度は比較しよう

問題演習などをする過程で比較するのがおススメ

民法に限らず、法律には似ている制度が数多く存在します。
宅建業法でいえば、35条書面(重要事項説明書)と37条書面(契約書面)が、似ている制度の代表例ですね。

35条書面と37条書面の「交付先」の違いを押さえよう

似ている制度がある場合、条文や判例が「A制度についてのものか、それともB制度についてのものか」という区別しなければならず、混乱してしまうことがあります。
そこで、似ている制度があるときは、それらの制度を比較してみることをおススメします。

「どの制度を比較すればよいのか」という点は、特に問題演習をする過程で、似たような制度が1つの問題の中に出てきた場合、それらの制度を比較してみるとよいでしょう。

具体的な出題例

似たような制度を比較する典型的な問題が、平成29年度宅建試験に出題されています。
不動産質権および抵当権という、似ている2つの制度を比較させる問題です。

【平成29年度宅建試験 問10 肢1・肢4】
(1)不動産質権と(2)抵当権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1.(1)では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保されるが、(2)では、設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない。
4.(1)も(2)も不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。

肢1に関しては、(1)(2)が反対になっているので、誤った選択肢です。
つまり、「被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保される」のが抵当権です(民法375条1項)。
これに対し、「設定行為に別段の定めがない限り、被担保債権の利息は担保されない」のが不動産質権です(民法358条、359条)。

肢4に関しては、不動産質権も抵当権も不動産に関する物権であり、登記が対抗要件になりますので(民法177条)、正しい選択肢です。

このように、問題演習などを通じて、似たような制度を比較していくとよいでしょう。

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四谷学院 宅建講座