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こんにちは、四谷学院です。

2013年、DSM(精神障害の診断・統計マニュアル)が最新版「DSM-5」に改訂されました。
改訂にともなって、疾患の名称・カテゴリーの一部が変更されました。
臨床の現場では、DSM-5が共通言語になりつつあります。最新版DSM-5における表現をしっかり押さえておくことは、大きなメリットになります。

以下、改訂によって何が変わったのか、大まかに見ていきましょう。

DSM-5の概要

DSMは、正式名称を「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」といいます。頭文字をとってDSMと呼ばれるわけですね。
DSM-5は、アメリカ精神医学会によって2013年に発行されました。精神障害の診断・統計マニュアルの最新版です。なお、日本版は2年後の、2014年に発行されています。
「5」とあるとおり、5回目の改訂です。

DSM-Ⅳと同様に、複数の特徴的な病態(症候)の有無をもとに診断を下す操作的診断基準が設定されています。
診断にあたっては、症状を聞き取って、基準に当てはめていきます。
DSM-Ⅳで採用されていた「多軸評定システム」は、期待されていたほど活用されず、廃止となりました。これにともない、V軸において設定されていた、障害の程度を量的に表す機能の全体的評定(GAF)も除外され、かわりに世界保健機関能力低下評価尺度(WHODAS)が採用されています。

疾患の概念は、DSM-Ⅳに比べて流動的です。
「多くの疾患分類の間にある境界は、あいまいで連続的(スペクトラム)である」という考え方に基づき、
診断カテゴリを細分化するよりも、共有される症状や危険要因の妥当性を検証し、疾患の起源および疾患の間の病態生理学的な共通性に関する理解を向上させることに重点が置かれています。

新しい疾患、下位分類、特定用語の追加、既存の疾患の削除まで、多くの変更点がみられます。各精神疾患は、できるだけわかりやすく簡潔に記述され、医師だけでなく、心理臨床や研究者、患者本人とその家族にまで、理解を共有できるように配慮されています。

こうした変更により、臨床家にとっては、より患者の臨床像を的確に反映した診断が行えるようになったともいえます。
その一方で、疾患をスペクトラムでとらえる観点により、疾患の範囲が広がり、DSM-Ⅳでも指摘されていた流行診断、過剰診断が、さらに増加することも懸念されています。そこで、臨床場面では、むやみに疾患を作り出さないように注意して使用すべきとの指摘がなされています。

DSM5の注意点

実際問題として、診断は医師の仕事であり、臨床心理士が医療機関において医学的診断を下すことはできません。
診断基準が少々変わっても、心理臨床における仕事は何ら変わりません。心理臨床の場においては、医師による診断を理解できるレベルで診断基準の変更を把握しておき、その上で的確な臨床心理学的アセスメントを行うことが重要です。心理臨床の専門家という立場を堅持することが、クライエントの利益につながる、という視点を変わらず持ち続ける意識が大切です。

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