こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。

今回は、民法のマイナー分野のうち、債務引受第三者のためにする契約について簡単に見ていきましょう。

本記事は、以下の記事に基づいて、債権法改正前の2019年度宅建試験対策として公開した内容を再編集したものです。債権法改正に伴い、債務引受が条文化されています。
(第三者のためにする契約については、債権法改正前から条文があります。)

宅建合格の鍵?民法のマイナー分野について

債務引受について確認しよう

債務引受とは、債務がその同一性を保ったまま第三者に移転することです。
このとき、債務者に代わって新たに債務者になる人を引受人といいます。

たとえば、以下の事例で考えましょう。
Cが債務引受を申し出たことで、新たに債務者になるCが引受人となります。

A(債権者)がB(債務者)に対して100万円を貸していた。
C(引受人)が「Bの借金は私が返済します」と申し出た。

以下で述べるように、債務引受の方法として、民法では、免責的債務引受併存的債務引受の2種類を定めています。

免責的債務引受は引受人だけが債務を負います

免責的債務引受とは何か

免責的債務引受とは、債務引受によって債務者が債務を免れる免責される)場合のことです。
免責的債務引受によって、引受人だけが債務を負うことになります(民法472条1項)。

先ほどの事例で説明します。

AがBに対して100 万円を貸していた。
Cが「Bの借金は私が返済します」と申し出た。

この事例が免責的債務引受にあたるとすると、BはAに対する100万円の返済義務を免れるとともに、100万円の返済義務はCだけが負うことになります。

免責的債務引受をする3つの方法

免責的債務引受は、以下の3つの方法によって行うことができます。

(1) 債権者・債務者・引受人間(ABC間)で契約する方法
(2) 債務者・引受人間(BC間)で契約した上で、債権者(A)が引受人に対して承諾をする方法(民法472条3項)
(3) 債権者・引受人間(AC間)で契約した上で、債権者が債務者に対して契約した旨を通知する方法(民法472条2項)

(3)の方法をとる場合に債務者の承諾が不要であることがポイントです。

併存的債務引受は債務者と引受人が連帯して債務を負います

併存的債務引受とは何か

併存的債務引受とは、債務引受によって引受人と債務者が連帯して(併存して)債務を負担する場合のことです。
併存的債務引受によって、引受人の債務と債務者の債務は連帯債務の関係に立ちます(民法470条1項)。

先ほどの事例で説明します。

AがBに対して100 万円を貸していた。
Cが「Bの借金は私が返済します」と申し出た。

この事例が併存的債務引受にあたるとすると、BとCが連帯して、Aに対して100万円の返済義務を負うことになります。

併存的債務引受をする3つの方法

併存的債務引受も、免責的債務引受と同様に、3つの方法によって行うことができます。

(1) 債権者・債務者・引受人間(ABC間)で契約する方法
(2) 債務者・引受人間(BC間)で契約した上で、債権者(A)が引受人に対して承諾をする方法(民法470条3項)
(3) 債権者・引受人間(AC間)で契約する方法(民法470条2項)

(3)の方法をとる場合、債務者の承諾は不要であり、引受人とともに債務を負う債務者の意思に反していても構いません
債権者・引受人間での債務引受契約は、債権者・保証人間で保証契約を締結することに似ているからです。

また、(2)の方法は民法が規定する第三者のためにする契約に該当します(民法470条4項)。
債務者と引受人との間で、債権者(第三者)のために債務引受契約をしているからです。

第三者のためにする契約を押さえておこう

第三者のためにする契約とは何か

第三者のためにする契約とは、たとえば、以下の事例におけるAB間の契約のことです(民法537条1項)。

AがBに対して100 万円を貸す場合に、AがBからの求めに応じ、100万円をAからC(第三者)に直接交付すると約束した。

Cへの支払いを求めたB要約者、Bの求めを承諾したA諾約者、貸金の交付を受領できるC受益者といいます。

このとき、Cが100万円を受領する権利を取得するには、Aに対して受益の意思表示をすることが必要です(民法537条3項)。
つまり、CがAに対して「100万円の交付を受ける」との意思表示をした時点で、Cは100万円を受け取る権利を取得します。

併存的債務引受における(2)の方法との関係

前述した併存的債務引受における(2)の方法(BC間の契約)では、Aへの借金返済を求めたB(債務者)が要約者、Bの求めを承諾したC(引受人)が諾約者、借金返済を受領できるA(債権者)が受益者となります。

そのため、AがCに対して受益の意思表示(承諾)をした時に、AはCからも借金返済を受領する権利を取得します。

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