こんにちは、四谷学院宅建講座の甲斐です。
今回は宅建業法から、「営業保証金と弁済業務保証金の『供託』手続きの違い」についてお話したいと思います。
営業保証金や弁済業務保証金とは何か?
宅地建物取引業法(宅建業法)が定める制度の中で、営業保証金または弁済業務保証金を供託する場面があります。
営業保証金も弁済業務保証金も、取引の相手方を保護するため、供託所に金銭や国債などを供託するものです。
営業保証金は宅建業者が自ら供託します。
それに対し、弁済業務保証金は保証協会が供託します。
このような違いがあります。しっかり理解しておきましょう。
保証協会への加入は任意
保証協会とは?
保証協会とは、宅建業者だけを会員(社員)とする、国土交通大臣が指定した団体です。
保証協会に加入するかどうかは宅建業者の任意、つまり自由です。
そこで、営業保証金を供託するのは、宅建業者が保証協会に加入しない場合となります。
宅建業者が保証協会に加入する場合には、保証協会が弁済業務保証金を供託することになります。
以下では、営業保証金や弁済業務保証金が供託されるまでの過程を、簡単に見ていきましょう。
営業保証金が供託されるまでの過程
営業保証金の供託は、下図のとおりです。
「宅建業者が供託所に直接供託する」というシンプルなものです。
なお、供託先は主たる事務所(本店)の最寄りの供託所です。
営業保証金の供託額は、主たる事務所(本店)が1,000万円、従たる事務所(支店)が1カ所につき500万円となっています。
たとえば、本店と支店4カ所で宅建業を営む場合は、1,000万円+(500万円×4)=3,000万円を本店の最寄りの供託所に供託します。
つまり、支店分もすべて本店の最寄りの供託所に供託します。
供託額 | |
本店 | 1,000万円 |
支店1 | 500万円 |
支店2 | 500万円 |
支店3 | 500万円 |
支店4 | 500万円 |
合計 3,000万円 |
供託の方法は、金銭で供託、有価証券で供託、金銭と有価証券を併用して供託、のいずれかを選択することができます。
ただし、有価証券の評価額については、国債証券は100%、地方債証券と政府保証債証券は90%です。
例えば、上記のように3,000万円を供託する場合、国債証券であれば、額面3,000万円分の国債証券を供託すれば足ります。
しかし、地方債証券のときは、額面3,000万円分の地方債証券を準備しても、評価額は2,700万円分(3,000万円×90%)であって、あと300万円分が足りません。この場合、300万円分を追加準備して供託をする必要が生じます。
弁済業務保証金が供託されるまでの過程
弁済業務保証金の供託は、下図のように「宅建業者⇒保証協会⇒供託所」という流れを押さえることがポイントです。
弁済業務保証金の制度を利用できるのは、保証協会の社員である(保証協会に加入しようとする)宅建業者です。
宅建業者⇒保証協会
まず「宅建業者⇒保証協会」の流れでは、宅建業者が弁済業務保証金分担金を納めます。
宅建業者は、弁済業務保証金分担金を納めることで、保証協会への加入が認められて、保証協会の社員となります。
弁済業務保証金分担金の納付額は、主たる事務所(本店)が60万円、従たる事務所(支店)が1カ所につき30万円です。
営業保証金の供託額に比べると、非常に少ない金額で足ります。
たとえば、本店と支店4カ所で宅建業を営む場合は、60万円+(30万円×4)=180万円を加入しようとする保証協会に納めます。
なお、弁済業務保証金分担金は、すべての金額を金銭で納めることが必要で、有価証券で納めることはできないという点に注意しましょう。
保証協会⇒供託所
次に「保証協会⇒供託所」の流れでは、保証協会が弁済業務保証金を供託します。
弁済業務保証金の供託額は、宅建業者が保証協会に納めた弁済業務保証金分担金の額です。
たとえば、上記のケースの場合は、宅建業者が180万円を納めていますので、保証協会は180万円を供託所に供託します。
弁済業務保証金分担金の納付と異なるのは、金銭のほかに有価証券を利用できる点です。
有価証券の評価額は、営業保証金の供託と同じく、国債証券は100%、地方債証券と政府保証債証券は90%です。
まとめ:「供託」手続の違い
ここまで供託の手続きの違いを見てきましたが、いかがでしたか?
最初は混乱するかもしれませんが、整理してみると比較的シンプルな仕組みです。
分かりにくいところは具体的な例をイメージすると、理解が深まるかと思います。特に似たような名前や手続きの場合には、「違い」をしっかり押さえておきましょう。
四谷学院宅建講座のテキストでは、今回のブログでも使用したわかりやすいイラストを使って丁寧に解説しています。
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