こんにちは、四谷学院通信講座の甲斐です。
今回は、宅建業者も適用対象となっている「犯罪収益移転防止法」(犯罪による収益の移転防止に関する法律)の概要を見ていきます。
犯罪収益移転防止法は、近年の宅建試験においても出題されていますので、宅建試験対策としても概要を押さえておくことは重要です。
犯罪収益移転防止法の目的
犯罪収益移転防止法は、マネーロンダリングやテロ資金供与を防止して、資金面から犯罪組織、犯罪行為の撲滅を目指すことを目的とした法律です。
テロ資金供与とは、テロ行為のために必要な資金をテロリストに提供する行為のことです。
犯罪収益移転防止法に基づく義務が課される「特定事業者」とは?
犯罪収益移転防止法では「特定事業者」に対して様々な義務を課しています。
特定事業者とは誰なのかについては、犯罪収益移転防止法2条2項で詳細に規定されていますが、宅建業者も特定事業者に該当します(犯罪収益移転防止法2条2項42号)。
その他には、金融機関、クレジットカード事業者、宝石・貴金属等取扱事業者、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁護士などが特定事業者に該当します。
犯罪収益移転防止法に基づく義務の対象となる「特定業務」とは?
犯罪収益移転防止法は、特定事業者によるあらゆる行為が義務の対象になるわけではありません。
犯罪収益移転防止法に基づく義務の対象となるのは「特定業務」に限定されています。
何が特定業務に該当するかに関しては、特定事業者ごとに異なります。
宅建業者の場合は、宅地建物取引業のうち「宅地又は建物の売買又はその代理若しくは媒介」に係る業務が特定業務に該当します。
そうすると、交換や貸借に係る業務は特定業務に該当しないので、これらの業務を宅建業者が行っても、犯罪収益移転防止法に基づく義務は課されません。
特定事業者に課している義務
犯罪収益移転防止法が特定事業者に課している義務のうち、主たるものは下記のとおりです。
取引時確認(犯罪収益移転防止法4条)
特定事業者は、特定取引等(特定取引又はハイリスク取引)を行うに際しては、その相手方に対して、本人特定事項、取引目的、職業(法人の場合は事業内容)の確認を行わなければなりません。これを取引時確認といいます。
本人特定事項とは、相手方が自然人の場合は氏名、住居、生年月日であり、相手方が法人の場合は名称、本店、主たる事務所の所在地です。
宅建業者の場合は、宅地建物取引業のうち「宅地又は建物の売買又はその代理若しくは媒介」が特定取引に該当します。
したがって、宅建業者の場合は「特定業務=特定取引」であると考えて構いません。
例えば、なりすましの疑いがある取引や、取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある相手方との取引が、ハイリスク取引に該当します。
【令和7年度 問44 肢1】
宅地建物取引業者Aは、土地付建物の売買を行うに際して、当該売買契約の相手方である買主が自然人であったので、氏名、住居、生年月日、取引を行う目的及び職業について、確認した。
⇒○
【令和4年度 問30 肢イ】
犯罪による収益の移転防止に関する法律において、宅地建物取引業のうち、宅地若しくは建物の売買契約の締結又はその代理若しくは媒介が特定取引として規定されている。
⇒○
確認記録の作成・保存(犯罪収益移転防止法6条)
特定事業者は、取引時確認を行った場合には、直ちに確認記録を作成し、特定取引等に係る契約が終了した日等から7年間保存しなければなりません。
確認記録とは、取引時確認に係る事項や、取引時確認のためにとった措置などに関する記録のことです。
取引記録等の作成・保存(犯罪収益移転防止法7条)
特定事業者は、特定業務に係る取引を行った場合には、直ちに取引記録等を作成し、取引が行われた日から7年間保存しなければなりません。
取引記録等とは、相手方の確認記録を検索するための事項や、取引の期日・内容などに関する記録のことです。
【令和7年度 問44 肢2】
宅地建物取引業者Aは、価額が5,000万円の土地付建物の売買を行ったとき、直ちに、一定の方法により、当該売買契約の相手方である買主の確認記録を検索するための事項、当該取引の期日及び内容その他の事項に関する記録を作成して保存していたが、当該取引の行われた日から5年経過したので、当年度末に当該記録を廃棄した。
⇒×(取引記録等の保管期間は7年間)
疑わしい取引の届出(犯罪収益移転防止法8条)
特定事業者は、特定業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあると認められる場合、又は特定業務に関し相手方がマネーロンダリングを行っている疑いがあると認められる場合には、速やかに行政庁に届出をしなければなりません。
【令和7年度 問44 肢3】
宅地建物取引業者Aは、土地付建物の売買契約の相手方である買主から収受した代金について犯罪により得た収益であるとの疑いがあったので、速やかに、所定の事項を行政庁に届け出た。
⇒○
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