民法でマイナー分野が出題される理由
直近の宅建試験の「民法」においては、過去の出題例がほとんどない分野、いわゆるマイナー分野からの出題が2問程度見られます。
その理由は、2020年度10月宅建試験の合格基準点が38点まで上昇したことを受けて、合格基準点が高くなりすぎないように調整しようとしているからだと推測されます。
要注意の民法のマイナー分野
過去の出題例がほとんどないものの、今後は出題可能性のある項目として、次の9つをピックアップしました。
(2) 取得時効(総則)
(3) 用益物権(物権)
(4) 弁済の充当(債権総論)
(5) 債務引受(債権総論)
(6) 第三者のためにする契約(債権各論)
(7) 不当利得(債権各論)
(8) 利益相反行為(親族)
(9) 遺言の執行(相続)
民法上の住所(総則)
住所は、一般には住民票に記載された場所を指しますが、民法では、住民票や本籍地などの形式的基準ではなく、そこで生活しているか否かという実質的基準によって住所を決めています。
すなわち、民法上の住所は、原則として各人の生活の本拠となります(民法22条)。
民法22条~24条の内容を押さえておくとよいでしょう。
取得時効(総則)
少し難しいところですが、民法187条に関連して、不動産について占有の承継があった場合における取得時効期間の計算方法がポイントです。
もちろん、所有権の取得時効期間(10年又は20年)も押さえておきましょう。
(取得時効は登記との関連で、2023年度宅建試験の問6で出題されていますが、難度の高い記述が含まれています。)
用益物権(物権)
用益物権は、不動産の使用収益に関する物権ですが、宅建試験では出題が少ない傾向です。
地上権及び地役権を理解しておくとよいでしょう。
(地役権は2020年度12月宅建試験の問9で出題されています。地上権は2022年宅建試験の問8で出題されていますが、地上権の細かい内容は出題されていません。)
弁済の充当(債権総論)
債務者が、同じ債権者に対し、同じ性質を有する債務(ex.金銭債務)を複数有している場合において、債務者が全ての債務を一括して弁済できない(一部弁済にとどまる)ときに、債務者による弁済が、どの債務のどの部分の弁済として充当されるのか、というのが弁済の充当の問題です。
民法488条~491条の内容を押さえておくとよいでしょう。
債務引受(債権総論)
債務引受は、2020年施行の債権法改正により、今までの判例(最高裁判所の判決)による運用が条文化された項目です。
債務引受には、併存的債務引受及び免責的債務引受の2種類があるので、両者の違いを押さえることがポイントです。
第三者のためにする契約(債権各論)
第三者のためにする契約は、「A⇒宅建業者⇒B」という形で、Aの不動産を宅建業者がBへと転売するときに利用されます。
民法537条~539条の内容を押さえておくとよいでしょう。
不当利得(債権各論)
民法703条~704条の定める不法利得の原則を定めた条文に加えて、債務の不存在を知ってした弁済(民法705条)、期限前の弁済(民法706条)、他人の債務の弁済(民法707条)、不法原因給付(民法708条)という不当利得の特則を定めた条文も押さえておくとよいでしょう。
利益相反行為(親族)
利益相反行為(民法826条)とは、(1)親権者にとって利益となるのに対し、子にとって不利益となる行為、又は、(2)同一の親権に服する子の一方にとって利益となるのに対し、他方の子にとって不利益となる行為のことです。
利益相反行為に該当するか否かについて、多くの判例(最高裁判所の判決)がありますので、それを押さておくとよいでしょう。
遺言の執行(相続)
遺言の執行は、相続人が自ら行う他にも、遺言執行者が行うこともあります。
遺言執行者は、遺言の内容の実現するため、相続財産の管理など、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する者です(民法1012条1項)。
遺言執行者がいる場合、相続人は、遺言の執行を妨げる行為(ex.相続財産の処分)ができなくなります(民法1013条1項)。
遺言の執行については、民法1004条~1021条に規定があります。
まずはテキストの内容を押さえよう!
宅建試験合格に向けては、何よりも先に「テキストで詳しく説明されている事項」をきちんと学習しましょう。
テキストで詳しく説明されているものが頻出事項ですから、それを押さえていくことが重要です。
その上で、マイナー分野もチェックすることで、高得点での宅建試験合格が期待できるようになるでしょう。
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